「オフィスが欲しいけれど、予算に合う物件がなかなか見つからない…」
その悩み、空き家が解決してくれるかもしれません。
2020年に東京のIT企業「アルティネット」が、上市町の西中町商店街にある空き家を利活用してサテライトオフィスを開設しました。
なぜ東京の企業が上市町に進出してきたのか? しかもなぜ空き家なのか?
今回は株式会社アルティネット (以下アルティネット) の永井さんに、直接話を聞いてきました。
この記事では、上市町の空き家をオフィスにするまでの経緯やメリット、注意点などをご紹介します。
オフィスが欲しいけれど賃料が高くて困っている方や、どこにオフィスをつくろうか悩んでいる方は、参考になることが多いので、ぜひ読んでみてください。
【目次】
⚫︎アルティネットの空き家利活用の紹介
・時系列
・上市町でオフィスを作った経緯
・上市町のオフィスでの事業内容
⚫︎上市町の空き家をオフィスにするメリット
・安くて広くて景色が良い
・自治体のサポートが手厚い
・地域と関わりながら仕事ができる
⚫︎空き家を活用したオフィスの紹介
⚫︎空き家をオフィスにするときの注意点
⚫︎地方へのオフィス開設時の注意点
⚫︎上市町の空き家をオフィスにした感想
⚫︎上市町の空き家利活用のサポート
アルティネットの空き家利活用の紹介
アルティネットがどのように空き家を利活用しているのか、次の流れで紹介していきます。
・時系列
・上市町でオフィスを作った経緯
・上市町のオフィスでの事業内容
【時系列】
⚫︎2019年5~10月
自治体×企業マッチングイベントに参加
⚫︎2019年11月
立山町 (11/28) 、上市町 (11/29) へ視察訪問し、地域課題に関するヒアリング&意見交換
立山町の休校になった小学校、上市町の空き家を訪問
⚫︎2020年2月
新型コロナウイルス感染症拡大により社内はリモートワークへ移行
⚫︎2020年6月
上市町お試しサテライトオフィス誘致事業で上市町に再訪問
⚫︎2020年9月
サテライトオフィス開設を決定
⚫︎2020年11月末
サテライトオフィス開設、11/25開所式
⚫︎2020年12月~
サテライトオフィス運用開始
【上市町でオフィスを作った経緯】
アルティネットが会社設立20年という節目を迎えた時に、社会が抱える課題を解決するための「地方創生」の仕事をしたい!という想いが生まれたのが最初のキッカケだったそうです。
「地方創生の仕事をするなら、東京にしかオフィスがないのは良くない。現地で仕事をした方が絶対に良い」と思い、地方にサテライトオフィスを作ろうと活動を開始します。
まずは東京で行われていた「自治体と企業をマッチングするイベント」に参加。代表の宮原さんの母方の曾祖父が富山市呉羽町出身という縁もあり、富山県の自治体と意見交換したいと思っていたところ、富山県の朝日町と立山町と繋がりができます。
2019年11月に富山県立山町を訪れることになり「せっかくなので私 (永井さん) の出身地でもある上市町にも訪問したい」 と、上市町への視察も決定。訪問先で地域課題について直接意見交換することができたそうです。
その後、新型コロナウイルス感染症の流行により、サテライトオフィスの計画は一旦中断。しかし、2020年6月に「お試しサテライトオフィスの誘致事業を活用しないか」と上市町から声をかけてもらい、再び訪問することになります。
その時に、店舗の後ろに住居や蔵がある元ふとん店の空き家物件を内見。「サテライトオフィスには広すぎる。もてあますかもしれない」と感じたものの、商店街の一角で立地もよく、物件の状態も良かったため、この物件をオフィスとすることを決めたそうです。
【上市町のオフィスでの事業内容】
アルティネットのサテライトオフィスでは、上市町と連携して地域の魅力を発信する事業を行ったり、近隣の飲食店の困りごとを解決したり、上市町のサテライトオフィスを拠点として富山県内および北陸地区の企業を対象に幅広いお仕事をされています。
例
・地域資源の魅力を発信する展示会の開催
・360度VR映像体験を活用した文化財保存勉強会
・地域特産品販売支援システム実証実験
本来得意としているシステム開発やWebサイトの構築だけで終わらず、上市町の特産品プロモーションのために東京まで野菜を売りに移動販売車を走らせることもあったそうです。
これらの話を聞いて、上市町にオフィスを開設したことが、地域課題の解決や地域貢献のための仕事につながっていることを実感しました。
上市町の空き家をオフィスにするメリット
上市町の空き家をオフィスにするメリットは、大きく次の3つです。
・安くて広くて景色が良い
・自治体のサポートが手厚い
・地域と関わりながら仕事ができる
⚫︎安くて広くて景色が良い
空き家全般にいえますが、空き家をオフィスにする最大のメリットは安いことです。「東京では考えられない安さでオフィスを作れる」と、永井さんも驚いていました。
さらに、地方の空き家は広いという特徴があります。東京などの都市部では限られたスペースで高い賃料が必要ですが、地方の空き家は駐車場付きの広々としたスペースを手頃な価格で使えます。
今回取材した物件も、店舗の後ろに住居や蔵、駐車場があり、オフィスと住居を兼ねることができる広さがあります。
オフィス近くには立山連峰がきれいに見えるスポットがあり、自然豊かな景色の中でリフレッシュしながら働けるのは上市町ならではの良さです。
⚫︎自治体のサポートが手厚い
上市町は空き家の利活用に力を入れているので、手続きや費用面でのサポートが充実しています。
例えば、補助金。
取材させていただいたアルティネットも、空き家リフォームのために富山県や上市町からの補助金を活用して初期投資を軽減することができました。
上市町は「空家バンク」や「0円空家バンク」などの制度が充実している関係もあり、補助金や手続きなどの疑問について親身になって相談にのってくれます。
空き家利活用について興味がある方は、気軽に聞いてみてください。
【上市町建設課管理建築班】
〒930-0393上市町法音寺1番地 (3階)
Tel:076-472-2477
Fax:076-473-2085
サテライトオフィスの補助金担当
【上市町産業課企業支援班】
〒930-0393上市町法音寺1番地
Tel:076-472-2519
Fax:076-472-1115
⚫︎地域と関わりながら仕事ができる
アルティネットでは、サテライトオフィスを上市町に作ったことで、地域での仕事の依頼が来るようになったそうです。
上市町にオフィスを構えて拠点を持つことで、地域の課題がリアルに分かります。
さらに、クライアントや顧客にも「本気で地域の課題を解決する覚悟がある」と伝えることができ、信頼してもらいやすいというメリットも。
オンラインでのコミュニケーションが増えた現代でも、直接顔を合わせることでしか作れない関係性があります。
たとえば上市町には、地域のコミュニティや企業とつながれる次のような場が多くあり、そこで仕事が生まれることも多いそうです。
例
・ハッピー上市会
・上市町商工会
・西中町商店街振興組合
・まちの人事部
移住してきた「よそ者」という壁はどこに行っても感じず、みんな温かく迎えてくれるそうです。上市町にオフィスを構えたら、ぜひ参加してみてくださいね。
空き家を活用したオフィスの紹介
空き家だった元ふとん店が、どのようなオフィスに変わったのか、ご紹介します。
1階の元店舗部分は、部分的にリフォームしてオフィスとして活用。2階建ての住居部分と中庭、蔵、駐車場はほぼそのまま活用しています。
⚫︎店舗部分
商店街に面したショーウインドウは、そのまま活用して地元企業の商品などを展示しています。
全てリフォームするのではなく、もともとの設備を活かし、上市の魅力を発信する場にもなっています。
⚫︎住居部分
2階建ての住居部分は、リモートワークで働くスタッフが中〜長期の泊まり込みでワーケーションができるようになっています。
オフィスとして使わない部分は、ほぼリフォームなしで空き家時代のままですが、シャワールームだけはリフォームされたそうです。
⚫︎蔵部分
そのまま蔵として物置にすることも可能ですが、防音性が高いので、地元の方がバンド活動の練習に使われたこともあるそうです。
レコーディングスタジオや配信スタジオに使う計画もあるようで、空き家をうまく利活用しておられます。
空き家をオフィスにするときの注意点
空き家をオフィスにする場合、リフォーム費用がかさむことがあるので注意が必要です!
広い空き家の場合だと、全体を改修する必要があったり、かなり費用がかかる可能性があります。
リフォーム費用を抑えるには、今回取材したアルティネットの事例のように、リフォームする箇所をオフィス部分やシャワールームに絞ったり、ショーウィンドウや蔵などの使えるものはそのまま利活用したりするのがおすすめです。
空き家になっていた期間が長いほどリフォームすべき箇所が多くなる傾向があるため、築年数や空き家の状態等は事前に確認するようにしましょう。
実際に内見した上で、リフォーム箇所を見極めて見積もりを取っていくことが大切です。
地方へのオフィス開設時の注意点
地方オフィスを開設して仕事を進めていく場合、業務範囲が広がりすぎることがあるので注意が必要です。
上市町でオフィスを作った後に想定外だったことをお聞きしたところ、「幅広い業務をすることになると予想していたが、予想を上回る幅広さだった」と話しておられました。
上市町ではハッピー上市会や商工会など繋がりが多くあり、企業経営者や自治体、個人商店の方など、人が話し合う場所が多くあるため様々な仕事が生まれます。
地元の美術館で開催する展示会の企画・運営をしたり、軽貨物自動車を借りて野菜を売りに東京まで走ったり、商店街の活動に参加したりなど、予想していなかった仕事もあったそうです。
東京ではチャレンジできなかったような想定外の業務に取り組めることは、地方にサテライトオフィスを開設した際に実感できる醍醐味とのこと。
仕事が楽しすぎて夜遅くまで取り組んでしまうこともあるので、体調を崩さないように注意して自己管理しているそうです。
上市町の空き家をオフィスにした感想
「上市町では、東京でやっていた仕事よりも幅広くいろんなことをする。今までやってきたことを活かせるときもあるし、全くやったことがない仕事もある。大変だけど楽しい。」
今回のインタビューの最後にこのように話すアルティネットの永井さん。
上市町は人と人の繋がりが強く、その繋がりからさまざまな仕事が生まれていると感じました。
空き家を上手く利活用すると、オフィス開設費用の節約だけでなく、仕事や人間関係の広がりなどの大きなメリットも得られます。
・空き家をオフィスにしてみたい!
・いくらでオフィスが作れるんだろう?
・手続きの流れなどをもっと詳しく知りたい!
このように少しでも興味を持った方は、次の「上市町の空き家利活用のサポート」にも目を通してみてください。
上市町の空き家利活用のサポート
上市町では、空き家を利活用するために「空家バンク」や「0円空家バンク」という制度のほか、空き家や店舗活用に関する各種補助金の制度などのサポートが充実しています。
補助金を上手く活用すると、費用の節約に繋がるので知っておいて損はありません。
次のように様々な補助金があるので、それぞれ下記リンクを参考にしてくださいね。
・空家に関する各種補助金
・上市町創業等支援事業費補助金
・上市町空き店舗活用等地域活性化事業費補助金
・上市町創業支援融資貸付利子助成金
・上市町お試しサテライトオフィス誘致事費業補助金
「空家バンク」や「0円空家バンク」は、物件を探すときにチェックしておくと便利です。
0円空家バンクの仕組みについては、次の動画を見ていただくと大まかな仕組みが分かるので見てみてください。
空き家利活用に興味を持たれた方は、上市町役場の建設課管理建築班までお気軽にご相談ください。
上市町建設課管理建築班
〒930-0393上市町法音寺1番地 (3階)
Tel:076-472-2477
Fax:076-473-2085
相談や問合せは、かみいち空家の窓口まで
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