2024年10月19日(土)と20日(日)の2日間にわたって、富山県上市町(かみいちまち)で上市暮らし体感インターンシップツアー(以下、ツアー)が開催されました。
8月にはお盆と夏の上市町を体感するツアーが開催されましたが、今回は「りんご狩り」や「剱の大王杉トレッキング体験」など、秋の上市町を楽しめるツアーです。
この記事では、2日間のツアーの参加レポートをお届けします。
<目次>
【10月19日(1日目)】
1.森のくまさん農園りんご狩り体験
【10月20日(2日目)】
2.剱の大王杉トレッキング体験
3.バーベキュー
2.剱の大王杉トレッキング体験 3.バーベキュー
ツアー2日目の10月20日(日)は、午前9時に上市町伊折にある馬場島荘(ばんばじまそう)に集合です。
馬場島の標高は750m。標高が100m上がると気温は約0.6℃下がると言われており、平地よりも寒く感じます(上市町役場の標高は 38mなので約700mの差があると考えると、4.2℃低いということになります)。
バーベキューのためにテントを張って準備。奥に見える建物が馬場島荘
この日は、県外からの参加者(東京都2人、兵庫県1人)を含む計15人で、山の恵みのある上市町の暮らしを体感します。
県外から参加したみなさん
まずは、上市エコツアーガイド・tocotoco(以下、トコトコ)さんの案内で、樹齢1000年を超える「剱(つるぎ)の大王杉」を目指します。「剱の大王杉」は、約30年前に登山家の佐伯郁夫さんが積雪時の下山時に発見した立山杉で、そこまでの道のりは中級者コースです。
そしてトレッキングの後には、上市町の食材を楽しめるバーベキューが待っています。
はじめに、トコトコのメンバーが挨拶しました。「剱の大王杉」までガイドをしてくれるのは、トコトコの “たえちゃん” と “さおりん” です。あとの2人は、残ってバーベキューの準備をしてくれます。
トコトコのメンバー。たえちゃん(左端)とさおりん(右端)が今回のガイド
それでは早速、樹齢1000年を超える「剱の大王杉」に向けて出発です。「剱の大王杉」は、中部山岳国立公園内に位置する松尾平付近の森の中にあり、馬場島荘からは歩いて1時間ほどの距離にあります。
出発する参加者のみなさん
この石標から左の道へと入っていきます
少し歩くと、道にどんぐりが大量に落ちていました。“どんぐり” はブナ、ミズナラ、コナラの実の総称で、秋のクマの主食となります。
大量に落ちているどんぐり
ここでトコトコの “たえちゃん” から驚きの発言がありました。
「みなさん、知ってましたか? これまで私たちがどんぐりの “帽子” と呼んでいたものは、実は “パンツ” なんです。木になるとき、実が上向きにつくため、帽子だと思っていた部分は下にくるんですね。そのため、最近では “パンツ” と呼ばれることが増えてきました。どんぐりの見分け方は単体だと難しいですが、“パンツ” を履いていれば分かります。ベレー帽のようなパンツがミズナラ、水玉ウロコパンツがコナラです。」
手前がミズナラ(ベレー帽のようなパンツ)、奥がコナラ(水玉ウロコパンツ)
どんぐりをきっかけに今年のクマの話題に
今年は富山県内でブナが凶作、ミズナラとコナラが並作なものの、上市町ではミズナラが豊作なため、クマが人里までは降りて来ていないそうです。
ミズナラの木
そのほかにも、植物に詳しい“たえちゃん”から、ところどころで解説をしてもらいながら進みました。
植物の解説をする“たえちゃん”(左)
オオハンゴンソウ(環境省指定特定外来生物)
茎が蛇の模様に似ているマムシグサ(有毒なので食べられない)
道中、人間も食べられる植物がいくつかありました。
マタタビは猫が好む植物として知られていますが、鎮痛・疲労回復の薬用植物でもあるそうです。口に含むと少しピリピリする感じがあったものの、人によっては何も感じず食べられる参加者もいました。
マタタビ(黄色くなったら食べられる)
みんなで試食
サルナシは、断面がキウイフルーツにそっくりでキウイと同じ、マタタビ科マタタビ属。「ベビーキウイ」とも呼ばれます。甘酸っぱく、疲労回復や強壮、整腸作用などの効能があるそうです。
サルナシ
ヤマブドウもありました。
ヤマブドウ
道路の右側には崖がそびえる
さて、植物をじっくり見て、たまに食べられる植物を試食しながら歩いていたところ、40分ほどで大王杉ルートへの入り口に到達しました(普通に歩くと20分ほどだそうです)。
ここからは急に雰囲気が変わります。少し険しい道になるため、気を引き締めて進まなければなりません。進んだルートを写真で紹介します。
大王杉ルートへの入り口
道路から脇道下へ降りていきます
岩の間を抜けて進みます
傾斜が急で細い道を登ります
坂の途中で楽しそうなお2人
倒木は細くなっているところを乗り越えます
途中で大きな立山杉の巨木をいくつか見ました。いずれも巨岩の上に生えていたため、地盤が固く、雪崩や山崩れがあっても倒れずにその場所で成長したのではないかという話でした。
大王杉かと思いきや、岩の上の巨木
20分ほど歩いたでしょうか。ついに、剱の大王杉へ到着しました!
高さ約28m、幹周約12m、樹齢約1,000年以上と推測されている、大きな立山杉です。
剱の大王杉
大王杉の幹の部分には、人が入れそうなほど大きな穴が開いています。中を覗き込んでみますが、大王杉の神秘的な雰囲気に、これ以上人間が踏み込んではならないような感覚を覚えました。
大王杉の大きな穴
複雑に絡み合って成長した大王杉
“たえちゃん”は、「大王杉は何本かの杉が集まって大きくなったのではないかと思われます。真ん中に大きな穴がありますが、木は幹と木肌の間に道管があって水を吸うので、穴が開いていても大きくなれるんです。」と解説します。
また、昔、この辺りは前田藩の管轄でした。木の真ん中の部分を天井板などに使うため、木を取った可能性も考えられるとのことでした。この土地で生きてきた巨木を通して、歴史の重みを感じます。
参加者全員で記念撮影
そして帰路に就きます。帰りも、きのこや木の実など、秋の森を感じながら歩きました。
木に生えたきのこ
馬場島に戻ると、トコトコのお2人によってバーベキューの準備が整えられていました。アップダウンの激しい山歩きをしてきた参加者のみなさんは、お腹がペコペコです。早速、串焼きやチーズフォンデュなどを楽しみました。
これからバーベキューです
準備をしてくれたトコトコのお2人
手袋を付けて好きな野菜・肉を刺します
火の通る時間が異なるため、肉は肉、野菜は野菜で串焼き
上市町の特産品である里芋をアルミホイルで包んで焼いた里芋焼き、焼き栗などもあり、みんなで秋の味覚を満喫します。時折、霧がかかる寒い日のため、温かい火のそばで温かいものを食べる幸せが、お腹も心も満たします。
里芋焼き
落ちていた朴葉を洗って乾かした、朴葉焼き
参加者のみなさんは、それぞれ秋の味覚と会話を楽しんでいました。
お腹が満たされて楽しいバーベキュー
夏のピザ焼き時も活躍したドラム缶釜
寒いので火の回りに集まるみなさん
参加者の方に、感想を聞きました。
「山歩き仲間に誘ってもらって参加しました。上市町は初めて来ましたが、山を一望できる景色に感動しました。2日前に上市町へ来て、ゲストハウスmetateのドミトリーに泊まり、日中はワーケーションをしていました。役場の方から町のことをいろいろ教えてもらったのですが、町の取り組みを楽しそうに話してくださったことが印象的で、町民の方とも直接話す機会があり、みなさんの活動や生き様に触れていろんな人生を知ることができました。町の雰囲気を体験でき、なかなか知り得ないことも知ることができる、そういうきっかけを作ってもらえたことが嬉しかったです。上市町には素敵な人が多いことを心底感じています。」
かなえさん(兵庫県在住)
「移住サイトでつながった方からの紹介で参加しました。登山や山歩きが好きで、仕事がフルリモートの時は山の近くに拠点を借り、レンタカーで生活するなどして全国を巡っています。上市町には初めて訪れました。山が見える風景が毎日見られるのがいいですね。立山・黒部は観光地の雰囲気ですが、上市町は静かでいいですね。知る人ぞ知るスポット的な感じで、好きでここを目指してくる場所ですね。渋め発見ポイントや見どころはすごくたくさんあるんだろうなと思います。2〜3日あれば車で巡るのもいいですし、お休みはトレッキングするのもいいですね。お散歩が登山みたいな。ずっと住んでいると分からない景色だろうなと思います。私は電気も通っていないような不便さを味わう生活がしたいので、ここ(馬場島)でテントを張って生活することもできそうです(笑)。
東京は月を見るにも、ビルの間から探さなければならないですが、上市町は駅までの道も畑が広がっていて、そんな風景が好きです。富山は噛めば噛むほど味わい深く、地域ごとに特色が違います。高知、長野、北海道、富山を移住先として検討してきましたが、共通しているのは自然が豊富で食には事欠かないということ。今回のツアーは、めちゃくちゃ満喫できました。」
かおるさん(東京都在住)
県外から訪れた人だからこそ分かる、上市町の魅力。今回のツアーは、その魅力を凝縮して地元の人と町外・県外の方、両方に満喫してもらえる良い機会となりました。
<動画をご覧ください!>