2024年8月13日(火)と14日(水)の2日間にわたって、富山県上市町(かみいちまち)で上市暮らし体感インターンシップツアー(以下、ツアー)が開催されました。「遠吠えコンテスト」や「ふるさと観光かみいちまつり」、「三角山やっほー大会&野草ピザ作り体験」など、上市町ならではの楽しみ方ができるツアーに、県内外から11人が参加しました。
この記事では、ツアーの参加レポートをお届けします。今回は後編、8月14日(2日目)の様子です。
<目次>
【前編:8月13日(1日目)】→(前編はこちらからご覧ください) https://iju-kamiichi.com/7432/news/
1.「花の家」イベントで遠吠えコンテストに参加
・いかにおおかみになり切るか!? 遠吠えコンテスト
・映画グルメを堪能! 花かあさんのやきとり
2.上市川付近の散策
3.ふるさと観光上市まつり
4.お招来と花火が紡ぐ、ふるさとへの郷愁
★【後編:8月14日(2日目)】★
5.三角山散策
6.野草ピザ作り
5.三角山散策
2日目の8月14日、午前9時30分。
集合場所となったのは、上市町東種(ひがしたね)にある白萩南部公民館です。
まず、参加者が1人ずつ自己紹介をしました。
1人ずつ自己紹介する様子
今日は「三角山」のトレッキング体験を行います。ガイドは上市エコツアーガイド・tocotoco(以下、トコトコ)のみなさんです。最年少メンバーはなんと中学1年生。
6人のうち4人がガイドとして登山に同行し、2人が火起こしなどピザ作りの準備のため公民館に残ります。
上市エコツアーガイド・トコトコのみなさん
三角山の登山口へは車で移動します。移動の前に、「オロロ」に関する注意点の説明がありました。
- 「オロロ(イヨシロオビアブ)」は、山間部にいるアブの仲間です。黒色や二酸化炭素に寄ってくる性質があり、人や動物の血を吸ってかゆみを残す厄介な昆虫です。
- 車も二酸化炭素を排出するため、現地に着いた後に「車のエンジンを切って窓を開けずに5分待機し、周りにオロロがいなくなってから車を降りる」ことを徹底します。
移動していると、トコトコさんから言われたとおり、走行中の車の周りにオロロが大量に集まってきました。1匹や2匹ではありません。10匹以上はいるように見えてゾッとしました。集団で襲われたらひとたまりもありません。
約8分後、登山口に到着した際は注意点をしっかり守ったおかげで、参加者の誰も刺されることなく済みました。
車から降り、トコトコさんから小型の蚊取り線香を借りる参加者
さて、これから登る三角山は標高538 mの初心者向けの山です。
この日は小学2年生の子が3人いましたが、全く心配なく登れるとのこと。それなら普段、運動不足の人でも大丈夫ですね。
登山の後には野草ピザ作りが待っています。そのため、みんなは登りながら、食べられそうな野草を摘むことも忘れてはいけません。
いよいよ出発です。
登山中は、トコトコさんのメンバーが列の前後と中間に入ってくれました。「これは食べられる?」「残念、食べられません!」などと確認しながら、食べられる野草を袋に入れていきます。判断がつかないものも、後で野草に詳しいメンバーの “たえちゃん” が判別してくれるため、一応入れておきます。
野草を摘みながら一列になって歩く
途中、良い香りのする「クロモジ」がありました。「クロモジ」は枝が高級楊枝の材料として茶席で用いられるほか、クロモジ茶やアロマ・エッセンシャルオイルの原料にもなる木です。
クロモジ
山頂近くで、綺麗な青色の蝶を見つけた! …と思ったら、「オオミズアオ」という蛾の一種でした。
「オオミズアオ」の生息地は日本各地の林や山間部。幼虫のうちに栄養を蓄え、成虫になると口が退化して餌が食べられなくなるそうです。寿命が1週間ほどしかない上に、夜行性で昼間に飛び回る姿を見られるのは珍しいため、出会えると幸運を呼ぶと言われています。
思いがけない山での幸運な出会いを、みんなで喜びました。
珍しいため、出会えると幸運を呼ぶと言われる「オオミズアオ」
そのほか、鮮やかなキノコなど、登山中にたくさんの山の魅力を感じました。ただし、キノコは食べられないものが多く、危ないので誰も拾いません。
一見、なめこかと思った鮮やかな色のキノコ
30分ほど歩いて、山頂に到着しました。
山頂に到着! 白い標識は「山頂標識」
山頂には「山頂標識」がありましたが、ところどころ削られています。どうやら、クマが削った跡とのこと。クマは木の実だけでなく、ペンキや油も好むそうです。
トコトコさんがクマよけの鈴と蚊取り線香を装備され、みんなでワイワイ喋りながら登っていたため、幸い、クマに遭遇することはありませんでした。
山頂からは、集合場所だった白萩南部公民館が見えます。
左の方に写っている青い屋根が白萩南部公民館
ここから「やっほー」と叫んだら、どうなるでしょうか? みんなで叫んでみました。
やっほー!
公民館でピザの準備をしてくれているトコトコの2人に後から尋ねたところ、しっかり聞こえたそうです。実際、2人からの「やっほー」の声も聞こえました。やまびこではありませんよ(笑)。
山頂で少し遊んでから、下山します。
頑丈な枝があったので、ぶら下がってみる子も
女の子が遊んでいた木の枝に、何やら白い綿毛のようなものがありました。「植物の種かな」と思って見ていると、ピョンと動くのです。
これは、カメムシ目の「アミガサハゴロモ」の幼虫だそうです。綿毛のようなものはお尻から出したロウ物質で、擬態と逃走に使われているようです。素早く逃げていきました。
綿毛のようなアミガサハゴロモの幼虫
こうして天候にも恵まれ、興味深いものにも出会うことができた三角山の登山。
運動した後のお楽しみは、白萩南部公民館に戻って野草ピザ作りです。
6.野草ピザ作り
白萩南部公民館に到着したら、早速、みんなが三角山で摘んできた野草をトレーに広げました。トコトコの中でも特に野草に詳しい “たえちゃん” に、食べられるものかどうかを判別してもらいます。
たえちゃんに野草を判別してもらう様子
食べられる野草には、もみじ、葛の花、タムシバ(ニオイコブシ)、ウワバミそう(よしな)、マツバ、コシアブラ、タカノツメ、ミズナラ、キブシがありました。
「ツツジやアジサイは毒があるからダメ」だそうです。
食べられる野草(※食べる際は専門家の監修のもとでお願いします)
白萩南部公民館の館長さんのご厚意で、みょうがや畑でとれたナス・オクラ・ピーマンを差し入れてくださいました。ピザの具材としていただきます。
茎や根っこ付きの「みょうが」
ピザ生地は事前にトコトコさんが作ってくれていたものを伸ばして丸く広げ、ピザソースを塗ってトッピングにウインナー・トマト・玉ねぎ・ベーコン・ナス・ピーマンを載せていきました。
その上に野草とチーズを載せ、焼きます。
たくさんの具材を載せた盛り盛りのピザ
ピザを焼くためのツールは、なんと「おかき缶」。その名のとおり、おかき(もち米から作られた米菓)が入っていた四角い缶です。
おかき缶の中にアルミホイルを敷いてピザを入れ、蓋をして上と下から「オガ炭(おがくずを再利用して作られた木炭)」で熱を加えます。焼き時間は5〜10分程度と、早く熱が通ることに驚きです!
「オガ炭」でピザを焼く
焼き上がり!
参加者のみなさん、焼き立て熱々のピザを味わいました。
気になる野草のお味は…苦いのではないかと想像していましたが、ピザの他の具材やチーズの味が強く、ほんのりと感じる程度でした。たくさん載せても苦くはなく、とても美味しかったです。
こんがりと綺麗に焼けました
熱々のピザを味わいます
野草ピザの他に、マシュマロとブルーベリーのデザートピザも作らせてもらえました。これがまた、美味しいのなんの。子どもも大人も大喜びでした。
マシュマロとブルーベリーのデザートピザ
そしてマシュマロと言えば、そのまま焼いて食べるのも楽しみの1つ。子どもたちは長い枝の先端にマシュマロを刺し、ピザの後に残ったオガ炭で焼いていました。
長い枝に刺してマシュマロを焼きます
枝が長いため、持つ手が熱くないのが便利
このほか、トコトコさんが用意してくれていたグルメを紹介します!
- クロモジ茶
クロモジの枝と葉っぱを洗ってペットボトルに入れて水を注ぎ、一晩冷蔵庫に入れた水出しクロモジ茶。さらにペットボトルごと冷凍されていたため、中心部分がまだ凍っていて冷たい! 爽やかな風味が美味しいです。
枝と葉が入った水出しクロモジ茶
- しそジュース
ビタミンや鉄分豊富な赤紫蘇の葉を、煮出して砂糖やクエン酸で煮詰めた手作りジュース。水で割っていただきます。疲労回復や夏バテ予防にぴったり!
赤いのがしそジュース
- 白萩南部公民館からいただいた野菜料理
ウドのきんぴら、きゅうりの塩揉み、ナスとオクラとピーマンの天ぷらなど、山菜や旬の野菜を使ったメニューの数々。箸が止まりません。
手前がウドのきんぴら
ナスとオクラとピーマンの天ぷら
野草ピザをはじめとした美味しいメニューに舌鼓を打ちながら、参加者のみなさんは交流を楽しんでいました。
最後に、今回のツアーを担当した上市町企画課の青木さんが挨拶。
「2日間にわたって、ご参加ありがとうございました。様々な体験を通して、上市町の自然や山、人とのコミュニケーションもとれたのではないかと思います。上市町での楽しい過ごし方を知ってもらったことをきっかけに、これからも遊びに来てもらえると嬉しいです。そして良かったら、移住も検討してみてくださいね。」
ツアー参加者のみなさんにも、2日間の感想を聞きました。
「普段、大きい声を出すのは運動会くらいだけど、遠吠えコンテストが2位で嬉しかったです。三角山の頂上に登ったことが1番楽しくて、足が痛かったけど頑張りました」
小学2年生のたいせいくん(東京都出身、富山市在住)三角山の頂上にて
「遠吠えコンテストは子どもたちも楽しんでいたし、普段出せない大きな声を出すことで発散できて良かったと思います。上市町企画課の課長さんの遠吠えも楽しかったです。“おしょうらい” も普段見ることができない文化で、良い経験になりました。上市川にかかった白龍橋の名前の由来を聞き、知ると気持ちが違うと感じました。山登りも初めてで、短いコースではあったけど食べられる葉っぱを見つけ、野草ピザ作りも良い経験になりました。おもてなしが素晴らしくて感謝です。山に入るとスッキリしてパワーをもらえ、気持ちも元気になれると感じます。定期的に来たいです。」
まきさん(東京都出身、富山市在住)
「東京だと、山にあるものを取って食べることは考えたこともありませんでした。みなさんと一緒に会話しながら食べられて楽しかったし、貴重な体験ができました。ここでの生活やコミュニティの話を聞き、自然の中での暮らしの魅力を感じます。“花の家” への訪問は2度目でした。みなさんワイワイしていらっしゃって、蔵の中を見学するツアーも参加して、米を2年分保存していた話などを聞きました。ご先祖を呼ぶ “おしょうらい” など、貴重な体験ができました。」
ひでみさん(東京都在住)
「今日、1番楽しかったのは山登り。昨日は “花の家” のスタンプラリーと遠吠えコンテストが楽しかったです。『おおかみこどもの雨と雪』の映画は2回観ました。物語が思い出せるようになっているのが良かったです。」
小学2年生のさやこちゃん(富山市在住)
ツアー参加者のみなさんは、2日間、上市町を満喫されました。上市町のお盆独特の雰囲気や山登り初心者におすすめの楽しみ方など、ここでしかできない体験を通して様々なことを感じられたようです。
<動画>ご覧ください!
https://youtu.be/730sBtOFEak?si=nUKeJn81HN7XNhTl
②