【取材】子どもに空き家を負わせたくない!上市町0円空家バンクで空き家管理から解放

固定資産税の通知が来るたびに、「うちの空き家どうしようかなぁ」とモヤモヤしていませんか?

今回取材した土井さんは、不動産屋に「売却が難しい」と言われた実家 (空き家) を0円空家バンクを使って手放し、固定資産税の支払いや、草むしりなどの空き家管理から開放されました。


小柄で優しい笑顔が印象的な土井さん。空き家を手放すと決めた経緯や、10DKの空き家が売却できなかった理由、0円空家バンクに登録するまでの流れなど、とても丁寧に教えてくださいました。

空き家を何とかしたいと思いつつ何から始めていいか分からないという方は、一歩を踏み出すきっかけになるはずですので、ぜひ参考にしてみてください。

 


【目次】
⚫︎空き家を手放すと決めた理由と経緯
⚫︎初めて知った2つの衝撃事実
 ・法律上、売却が難しい家
 ・逃れられない民法上の責任
⚫︎空き家を所有し続けるデメリット
⚫︎空き家を手放すまでの流れ
⚫︎行動を続けるコツとマインド
⚫︎0円空家バンクを利用した感想
⚫︎上市町0円空家バンクのしくみ

 


空き家を手放すと決めた理由と経緯

土井さんが空き家を手放そうと思ったのは、「子どもたちに迷惑をかけたくない。自分が動けるうちに何とかしなければ…」という想いからでした。

空き家になった物件はご両親が住んでいた実家です。ご両親が施設に入所された後は誰も住んでいなかったため、土井さんが定期的に掃除や草むしりに訪れていました。


その後、ご両親が他界され、空き家になりましたが、しばらくは家をどうこうする気にはなれなかったそうです。

でも1年経ったとき、「この家を子どもたちに負わせるわけにはいかない」と思い、まず空き家内の片付けを開始しました。

子どもたちにも仕事がある。自分が動けるうちにやらなければ」と、ひとりでコツコツと片付けを始めたそうです。

 

 

初めて知った2つの衝撃事実

空き家となった実家を手放すために動き出した土井さんは、2つの衝撃的な事実に直面します。


⚫︎法律上、売却が難しい家

家の中の片付けが進み「いざ空き家を売ろう」と不動産業者を尋ねた際、土井さんは衝撃の事実を知ることになります。

ご両親が遺された家は法律 (建築基準法) 上、売却が難しい家だったのです。


土井さんの持つ空き家は、隣人所有の私道を通って入ることしかできず、接道義務を満たしていないため、不動産業者では扱いづらい物件でした。

※接道義務とは
建物を建てる場合、建築基準法に定められた道路に2メートル以上接していなければならないという決まりのこと。道路から奥まった土地でも、道路に面する土地が2メートル以上あることが求められます。既にある建物が接道義務を満たさない場合、増築や再建築ができないこととなっています。


土井さんは「売れないならば仕方ない、次の方法へ切り替えよう」と考えたものの、ご家族は事実をなかなか受け入れられず、納得させるには時間がかかったそうです。

木造2階建ての10DKの立派な家と約200坪の土地が売れないなんて… 私 (筆者) も、信じられない気持ちでした。


⚫︎逃れられない民法上の責任
その後何件か不動産業者をまわり、ご家族が納得したあと、次の方法として候補に挙がったのが相続放棄です。

しかし今度は、相続放棄しても手放せない責任があるということが判明します。

確かに相続放棄をすれば、固定資産税の支払いは不要になります。しかし民法上、最後に相続を放棄した人に責任が残るため、万一空き家が壊れて人や物に損害を与えた場合には、損害賠償を負わなければいけないのです。


もともと「子どもたちに迷惑をかけたくない」という想いがあった土井さんは、より一層、「自身できちんと空き家を処分しなければ」と感じたそうです。

 

 

空き家を所有し続けるデメリット

空き家を所有し続けることには、次のようなデメリットがあります。

・固定資産税がかかる
・掃除や除草などの手入れが必要になる
・建物が劣化する
・相続登記を忘れると罰則がある (2024年4月から)

 

空き家を所有している間は、使ってもいないのに固定資産税がかかり続けるうえ、掃除や除草が必要になります。

いずれ使うか売却するにしても、家は古くなり価値は落ちる一方…


さらに2024年4月以降は、相続によって不動産を取得した場合、3年以内に相続登記をすることが義務化されます。

もしも違反した場合には、10万円以下の過料の適用対象となるため、空き家を放置している人は注意してください。

2024年4月以前に相続された場合も、義務化の対象となるため、今お持ちの空き家が相続登記されているか確認することをお勧めします。


今回の取材でも、土井さんは「処分する空き家や土地が登記上、父や母ではなく、祖父や曾祖父のものもあった」と話されていました。

相続を繰り返すごとに、兄弟、子、孫と相続関係者が増えるため、手続きが面倒になります。空き家は不要になった時点で処分するのが、手間を最小限に抑えるポイントです。

 

 

空き家を手放すまでの流れ

土井さんは2023年の春から片付けを開始し、ひと通り整理し終わった秋頃から、空き家を手放すための手続きを始めました。

以下、時系列で紹介します。


⚫︎2023年10月
上市町の不動産業者を訪問、接道義務違反のため売却が難しいと発覚。0円空家バンクなら実家の空き家を扱えるかもしれないと紹介される。

司法書士事務所に依頼して、相続登記の手続きを開始 (手続き完了は翌年1月)。実家の空き家以外にも山や田畑を所有しており、いくつかは父が相続登記しておらず、祖父以前の名義になっていると判明。

⚫︎2023年12月
0円空家バンクに問い合わせて、上市町役場を訪問。接道義務の問題をクリアしないと0円空家バンクに掲載できないので、隣人に私道を譲ってもらう必要があると発覚。

12月18日に私道の所有者へ手紙を送り、12月25日に電話で譲渡可能の返事をもらう。司法書士事務所に間に入ってもらい、私道の譲受手続きを開始。

⚫︎2023年1~2月
登記と私道の譲受手続き完了後、空家バンクに登録。HP掲載。

⚫︎2023年2月末〜3月初め
入居希望者と面談予定。

 

 

行動を続けるコツとマインド

空き家を手放すまで、さまざまな障害があったにもかかわらず、1年足らずのうちに家の片付けから0円空家バンクでの物件公開にまで至った土井さん。

なんと家の中の不用品などを業者には頼まず、全部自分で処分したそうです!

 

特に、タンスを片付けるために自身でハンディチェーンソーを購入し、10棹 (さお) 以上解体したというエピソードには大変驚きました。

多くの人が、自分にはそこまでできそうにない…と思うのではないでしょうか。土井さんの『行動し続けるための考え方』が素敵だったので紹介します。

 

【空き家処分への道を ”楽しむ” コツ】
・空き家をきっかけに新しいことができると考える
・70代でやるべきことがあることに感謝を感じる
・ずっと家に居て家族と喧嘩するよりいいと考える

 

【行動を続けるための考え方】
・自分がやるしかないと覚悟を決める
・元気に動けるうちにやらないといけないと考える
・片付けることで、困っている誰かに空き家を使ってもらえると考える


この記事の取材は、2024年1月1日の能登半島地震の直後。

・火災や震災で家をなくした人に空き家を譲れたら
・自分の行動が困っている誰かの助けになれたら

自分が一刻も早く空き家を手放すことが、住居を必要としている方を助けることに繋がる!


このような考え方が、片付けや手続きが大変でも乗り越える原動力になるのだと実感。

必要としている方に住む場所を提供するために、使っていない空き家を手放す」と考えることは、片付けや手続きを乗り越える原動力になると感じました。

 

 

0円空家バンクを利用した感想

『何かあっても最終的に0円空家バンクに頼めば何とかなるだろう』という安心感がありました」と、話す土井さん。


私道の譲渡手続きが必要だとわかったときも、上市町役場の0円空家バンクの担当者に、何をどうすればいいか、誰に頼ればいいのかを教えてもらえたそうです。

「やることが沢山あって大変だったけど迷うことはなかった」と話しておられました。

 

土井さんにとっては、入居希望者との面談に上市町役場の方が同行してくれることも大きな安心となったようです。

「空き家を持っているけど、どうしたらいいか分からない」という方は、上市町役場の建設課管理建築班までお気軽にご相談ください。

 


上市町0円空家バンクのしくみ

今回土井さんが利用した「0円空家バンク」は、空き家を手放す人にとっても、取得する人にとってもメリットのある制度です。

知っておいて損はないので、情報を押さえておきましょう!

上市町ホームページ (0円空家バンク)

0円空家バンクの仕組みについては、上記動画を見ていただくと大まかな流れが分かります。

 

0円空家バンクを利用してみませんか?【動画】

この動画もあわせて見ていただくことで、より理解が深まるはずです。

空き家の提供者にとっても取得者にとってもメリットの大きい制度ですので、ぜひ積極的に活用してください。


上市町では空き家の利活用に力を入れており、「
0円空家バンク」の他にも通常の「空家バンク」や、各種補助金の制度も充実しています。

空き家に関する悩みや質問はどんなものでも大丈夫ですので、上市町役場の建設課管理建築班までお気軽にご相談ください。

上市町建設課管理建築班
〒930-0393上市町法音寺1番地 (3階)
Tel:076-472-2477
Fax:076-473-2085

相談や問合せは、かみいち空家の窓口まで
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