空き家は住居としてだけではなく、店舗として活用することもできます。
事例として紹介するのは、元旅館だった空き家を利活用してオープンしたカフェ「大岩甘露 まめぼう豆 (ず)」。
空き家を店舗活用することによって人の寄りどころとなり、雇用が生まれ、上市町の関係人口が増えたとても良い事例です。
元旅館がどのようにしてオシャレカフェに生まれ変わったのか、その経緯や体験談などを「まめぼう豆」のオーナーさんに詳しくうかがってきました。
空き家の利活用を考えている方やお店をオープンしたいと思っている方は、参考になることが盛りだくさんなので、ぜひ読んでみてください。
【目次】
⚫︎空き家リフォームのビフォーアフター
⚫︎カフェオープンまでの流れ
・時系列
・経緯
⚫︎店舗の活用内容
⚫︎空き家の店舗活用で大変だったこと
⚫︎空き家リノベーションの節約方法
⚫︎空き家を店舗活用してみた感想
⚫︎補助金や空き家バンクなどのサポート
空き家リフォームのビフォーアフター
リフォーム前の店舗外観
カフェになる前の空き家は、築100年以上の旅館でした。大岩山日石寺の参道にあり、多くの人の目に止まる場所です。
リフォーム後の店舗外観
店舗の顔となる入口部分を中心に、最低限のリフォーム。
雰囲気のある壁や休憩用のいす、緑のシートなどで、参拝客や観光客が小休憩できる活きたスペースに生まれ変わりました。
リフォーム前の店内の様子
元旅館の部屋の畳を剥がした状態。オシャレさはありません。
リフォーム後の店内の様子
天井のハリや柱などを上手く残しつつ、壁面、床、天井などは全てリフォーム。
元旅館だとは思えないほど、オシャレなカフェ空間に生まれ変わりました。
カフェオープンまでの流れ
まめぼう豆のオープンまでの時系列と経緯について紹介します。
【時系列】
⚫︎2022年1~2月
リフォーム開始
⚫︎2022年春
リフォーム終了
⚫︎2022年9月
Instagram開設
⚫︎2023月1月頃
店舗スペースリフォーム開始
イベントスペースとして貸し出しなど
⚫︎2023年4月
カフェとして営業開始
⚫︎2023年5月
運営会社「株式会社まめぼう豆」設立
⚫︎2023年6月
「大岩甘露 まめぼう豆 (ず)」オープン
【経緯】
まめぼう豆の物件は、所有者の方が経営していた築100年以上の旅館です。昔はにぎわっていましたが、宿泊客の減少と担い手不足で閉業し、お家の方が1人で住んでいる状態でした。
1人で使うスペースはわずかなので、何か上手く活用できないかと相談を受けていましたが、築年数が経っている物件のためできることは限られています。
そんな時に「町の活性化のためにこの物件を活かし何かをしよう」という話になり、外観のリフォームを開始しました。
観光客や参拝者からは「近隣の店舗の閉店後や冬季などに、どこかで休めないか?」との声が寄せられていたので、その声に応える形で寺カフェ「大岩甘露 まめぼう豆 (ず)」として利活用することを決めます。
資源の減少やコロナの影響でリフォームの資材が入ってこないトラブルや、繁忙期で作業できない期間などもあり、リフォームは複数回に分けて行うことに。そのたびに補助金申請などが必要になるなど、四苦八苦しながらなんとかオープンにこぎつけました。
空き家がカフェ兼Wi-Fiやコンセントの使用可能な無料休憩所として利用できるようになり、観光客や参拝者からの声に応えることができました。
オープン後の2023年8月からは、パティシエの女川 (おながわ) が加わり、甘納豆や高野豆腐を使った「精進スイーツ」などの提供を開始。カフェとしてもさらに進化しています。
店舗の活用内容
「大岩甘露 まめぼう豆 (ず)」は、2023年4月よりカフェとして営業を開始しました。
カフェとしてだけでなく、寺の従業員の休憩所、イベントの休憩スペース、佛師さんの工房などとして幅広く活用。
大岩山日石寺周囲の店舗は14時〜15時で閉店して真っ暗になるため、電気がついていることで老若男女問わず、観光客・参拝客の方々に安心感を与えています。
今後はカフェの2階や敷地内の他のスペースを、個展開催のスペースとして季節限定で貸し出すことなども検討中です。
カフェでは名物の「甘納豆のぜんざい」「高野豆腐のクッキー」、日曜限定で「おかゆ」などを提供しています。
甘納豆のぜんざいは4種類の「至高の甘納豆」が入っており、それぞれの豆の食感の違いが楽しめるメニューです。
高野豆腐のクッキーは、低カロリー高たんぱくであっさりとした仕上がりに。原材料が高野豆腐ということもあり、「グルテンフリー」でグルテンが苦手な方もおいしく食べられます。
おかゆは白粥、古代米を使ったおかゆや丁子かゆでトッピングは梅干し、塩昆布、しそ (ゆかり) の3種類です。
空き家の店舗活用で大変だったこと
空き家を店舗として活用するにあたって、大変だったことは次のとおりです。住居として活用する場合とは違った大変さがあるので参考にしてください。
⚫︎補助金の申請 (町、県、コロナ関係)
上市町、コロナ復興などの補助金の手続きにあたり、カフェのオープン前に会社を立ち上げないといけなかったため、店長を先に決める必要がありました。
⚫︎運営母体の区別
大岩山日石寺は宗教法人で収益化してはいけないため、住吉太嗣佛師を代表とする株式会社「まめぼう豆」を設立。会社設立に関わる事務作業などが増えました。
⚫︎法律の問題
空き家を事業に利用する場合、業種によってはキッチンや床材などを住居用から事業用にリフォームしなければならないことがあります。法律遵守の問題なので、事前に下調べをするなど注意が必要です。
⚫︎土地の規制
取得した物件が急傾斜地にある場合、建て替えや改築、リフォームの制限など、認可が必要になってきます。建物が長年その土地にあり、規制がかかる前に建てられたのであれば、周囲の土地環境の変化により建築当初と土地の規制が変わる可能性があるので注意が必要です。
⚫︎通信環境
リモートワーク用に通信環境を整える場合、Wi-Fiなど新たな工事が必要になります。この物件は山間部にあるため、障害物でWi-Fiが届きにくく想定より工事費がかさみ大変でした。
⚫︎汚れや破損
いたるところに汚れや破損があり、予算的に全てを完璧にすることはできませんでした。修繕するところは修繕して見栄えを整えるなど、工夫が必要でした。
⚫︎暖房設備
暖房器具の年式が古く、新調するのに想像以上にお金がかかりました。参拝客の方に暖を取ってもらいたいという思いがあったので、ここは妥協できない部分でした。
⚫︎キッチン設備
予算の関係もあり、現在の店舗に完全なキッチン設備を設置することはできませんでした。「高野豆腐クッキー」や「豆みつプリン」の調理はカフェとは離れた場所で行い、夏や冬は天気と闘いながら運んでいます。
空き家リノベーションの節約方法
空き家のリノベーションには想像以上にお金がかかるため、使えるものは活用するなど様々な工夫をしています。
⚫︎廃材を活用
旅館の廃材を佛師さんがDIYして店の家具を作りました。
木組み (釘や金物を一切使わず木と木をつなぎ合わせる技法) で仕上げられており、佛師さんならではの技術力の高さが垣間見えます。来店時は、ぜひ見てみてください。
⚫︎リフォーム済のトイレを活用
トイレは元旅館のときにリフォームしたばかりで綺麗だったので、ほぼそのまま活用しました。新たに水回りのリフォームをすることなく活用できているので、費用面でかなり助かりました。水道水ではなく山の湧き水を使用していて配管が複雑になっていたため、個人でDIYをするにはかなりハードルが高かったと思います。
⚫︎明確な優先度
空調設備の導入や修繕箇所に優先度をつけてリフォーム。営業に支障がでないスタッフのみのエリアは後回しにし出費を抑えました。すべてリフォームしてしまうと、お金がいくらあっても足りないので、妥協も必要です。
空き家を店舗活用してみた感想
大岩山日石寺周辺の店舗はTV番組などで有名になりました。昔に比べ若い観光客も増えていますが、14〜15時で閉店するお店が多いです。
まめぼう豆を開業したことで、多少遅くまで電気がついているお店ができました。若い観光客の方にも安心感も与えられているのかなと思っています。
そういう意味で、空き家をリフォームして開店して良かったです。何か思ったら、実際進めてみないことには分からないので。
ただし理想だけで経営はやっていけないので、長期的な目線だけでなく短期的にも利益を生む必要があります。何かアイディアが思い浮かんだら、発言や行動して試行錯誤しています。
補助金や空家バンクなどのサポート
まめぼう豆さんの話を聞いて、空き家の利活用はその地域や場所に大きな影響を与えることだと実感しました。同時に、お金の問題が出てくることも強く実感。
上市町ではそのような問題解決のために、空き家や店舗活用に関する各種補助金のほか、「空家バンク」や「0円空家バンク」などの制度が充実しています。
【空き家の利活用や創業に活用できる補助金の一部】
・空家に関する各種補助金
・上市町創業等支援事業費補助金
・上市町空き店舗活用等地域活性化事業費補助金
・上市町創業支援融資貸付利子助成金
上市町0円空家バンクのしくみ
0円空家バンクの仕組みについては、上記動画を見ていただくと大まかな流れが分かります。
この動画もあわせて見ていただくことで、より理解が深まるはずです。
空き家の利活用に少しでも興味がある方は、上市町役場の建設課管理建築班までお気軽にご相談ください。
どんな小さなお悩みや質問でも、全力でサポートさせていただきます。
上市町建設課管理建築班
〒930-0393 上市町法音寺1番地 (3階)
Tel:076-472-2477
Fax:076-473-2085
相談や問合せは、かみいち空家の窓口まで
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